とんかつ

昨日は朝からおなかがすいていて、夕方のレッスンの時間までまだ少しあったので、

先日通り過ぎただけだった、笹塚の、楽しそうな10号商店街で何か食べようと思い、とりあえず笹塚の駅に出て、まっすぐその商店街へ向かった。

久しぶりにこの駅で降りたのは半月ほど前のこと、甲州街道の向こうの、商店街の明るい花飾りが目に入った瞬間、

突然、そういえば18の時、その頃付き合っていた彼氏がこの近くに住んでいて、トイレットペーパーを買いに二人でそばの商店街へ行った、という17年前の記憶が戻ってきたのだった。

グーグルマップには、目的地であるレッスン先に行くのは、商店街を通り抜けるのが最短とあり、

17年ぶりに、今度は一人で、入り口から出口まで、くねくねと曲がる10号商店街を歩いた。

当時のことは思い出せないが、たかが17年、それがどうしたというのだ、といわんばかりの、

さかのぼって私がはじめて日本に来た小学生の頃を思い出させるような、店先に扇風機を並べて回す電気屋、千代紙の柄の箱であふれるせんべい屋、ひと山いくらの野菜やくだものに自転車のお客が群がる八百屋なんかに、私はすっかりうきうきした気分になった。

 

まだ時間があったので、できればゆっくり座って食べられるお店がいいな、と思いながらキョロキョロ歩いていると、ちょうどいいところにとんかつ屋さんがある。久しぶりの外食がひとりでとんかつ、というのはとてもいいかんじがしたが、 店構えは地味の極み。通りすがりの私も思わず経営状況が気になるほどで、入り口のガラス戸には白くスモークがかかり、中の様子も全くわからない。これは危ないかもと思ってまた歩き出したが、角を曲がる手前で、とても美味しそうなソースのにおいが漂ってくる。ソースに対して「おいしそう」と思うのははじめてだった。しばらく歩いてもそのにおいが頭を(鼻を?)離れないので、結局戻ることにした。改めて看板を眺めると、和同開珎のような古銭の形のロゴに、登運嘉通、とある。これで決まり!とガラス戸を開けると、思ったより広い店には、奥の座敷に一組の静かな客がいるだけだった。

 

食道楽のブログではないので簡潔に書くと、ものすごく美味しかった。そしてものすごく大きかった。出されたものを見て、「おいしそう」と思うより先に、一体これが何切れ食べられるだろう、と最近胃の小さくなっている私は、普段昼食にかけるお金の倍以上するロース定なんかにピンと来てしまったことを後悔した。でも最初の一切れから最後の一切れまで、とっても美味しかった。ロースかつを愛していた今より少し若い私が、過去から出てきて固く握手を交わしてくれているような、そんな確実なおいしさだった。

 

江戸家というその店を出てから翌日の今日まで、私は会う人会う人、とんかつ、とんかつ、と、とんかつという言葉を口から出さずにいられない。とんかつひとつでそんな風にさせられるとはものすごいことではないか。歌うたいとして初めて書いたわりと中身あるブログ記事なので、最後にそれなりのことを書いてみると、私も歌ひとつで、そんな風にさせられるようになりたい。えりちゃん、えりちゃん、と、言わずにおれないくらいの歌をうたうくらいには。

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コメント: 2
  • #1

    フーアン (月曜日, 17 8月 2015 11:11)

    こんにちは。
    初コメントです。
    江戸家さん、今度行ってみますね。
    10号商店街を抜けて、甲州街道渡った商店街の左手にある、フランス人シェフの小さなガレット屋さん(メゾンブルトンヌ)に行ったことがあります。
    美味しかったですよ。
    では、又~。

  • #2

    えり (水曜日, 19 8月 2015 11:29)

    フーアンさん、こんにちは!
    初コメントありがとうございます。
    小さなガレット屋さん、たぶん私も横を通り過ぎました。10号商店街が終わったかと思ったらまた商店街の続きがある、そのあたりですよね?私もいつかガレット試してみまーす!