台北の家

毎日ほんとに寒くなっちゃった。

家に帰るのについ下を向いてステステ歩いてしまうけど、ふと空を見ると星がすごくきれいだ。でもやっぱり寒いんだよなあ。

 

お正月、台湾にちょこっと帰ります。

母や親戚が年に最低1度は日本に来るし、facebookも親戚の投稿だらけなので、もうちょっと帰ってるような気分でいたけど、なんともう3年も帰っていなかった。近いからいつでも帰れると思ってたのに。

 

3年も帰ってないのはいつ以来だろう。

25の時以来のような気がする。

3年も帰ってないのに自分の家だと思っている。リビングに射してくる光、ベランダを裸足で歩く時の少し冷たいタイル、玄関の大理石はもっとひんやり冷たくて、台所の窓からのそよ風、床をスリッパがすたすた鳴らす音、誰かが帰ってきて鉄の門扉がかちゃりと閉まる音、玄関のドアが開いてドアに吊り下がったウィンドチャイムが鳴るキラキラした音、おじいちゃんの歩行器の音、マンションの入り口で誰かが鳴らすブザー、マンションの前の道で古新聞を集めるトラックからの呼び声、向こうの学校から聴こえるチャイム、廊下の奥の影、もういないけど、みーちゃんの気配。鈴の音。もういないけど、台所の魔法瓶の横のピンクの椅子に腰かけて、台所仕事する母に話しかけるおばあちゃんの話し声。同じ椅子に座って、台所仕事する母に向かって大きな抑揚をつけて話すおばアイバカンのよく響く声。笑い声。母が買ってきてキッチン台の魔法瓶の前に洗って置いた芭樂、蓮霧、棗などの果物。あとで食べようと置いてある、袋のままの豆漿、飯糰、燒餅油條。そういうのがすぐに浮かんでくる。私もそこにいるような気がする。リビングの奥のピアノのところに座って。ピアノの前の赤いソファに座って。母はよく模様替えするからもうあの赤いソファは別のところに置かれてるかもしれないけど。

 

せめて写真が見たいと思って、7年くらい前かな、まだおばあちゃんが生きてた頃、アメリカから帰った時に撮った家の写真を探してるけど見つからない。当時使ってた、昔のゲーム機を一回り小さくしたみたいなころんとした形のノキアの携帯のカメラで、家の部屋全部と2つのベランダの写真を撮った。誰かがいたり、いなかったり。みーちゃんが寝ていたり。おじいちゃんがテレビを見ていたり。母の蒸かした白い饅頭が二つテーブルにあった。

 

ママが撮ったベランダのブーゲンビリアの写真。

このブーゲンビリアの下に、垂れ下がるようにして咲いている黄色い花がずっと大好きだけど、名前がわからない。家に帰る時、いつも必ず上を見上げて、あの手のひらに乗るくらいの黄色い花が咲いてるか確かめて、そして7階のブザーを鳴らして、「開門」と言って家に入るのだ。