ぽかぽか

今日も昼間はぽかぽか。窓全開にしてもあったかかった。年末。太陽ってすごいね。少し陰ると風がとたんに冷たくなった。

 

昨夜は秋葉原 CLUB GOODMANで鬼怒無月弾きっぱなし。みんなでわいのわいの楽しかった。年に一度ああいうイベントがあって、みんなで一年の終わりを感じられるっていいものですね。鬼怒さんありがとうございました。共演者のみなさん、お店の方々、お客さま、みなさんどうもありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いします。

 

秋葉原に行く前、イブの日の本番前に駆け込んだ餃子のミンミンにお気に入りの赤い水筒を置いてきてしまったことに気が付き、四谷に寄って取りに行った。ミンミンのおじさんが私の水筒にしっかり「12/24 忘れ物」と付箋を貼ってレジ横に保管しておいてくれて、しかも、もしやと思って水筒を開けてちょっと中身を舐めてみたら、まだ飲めた。2日前のコーヒー+牛乳+はちみつ+シナモン。2日経ってもおいしかった。ミンミンありがとう。また行くね。餃子食べたい。餃子大好き。餃子ってそういえば台湾では大晦日に食べるね。水餃子だけど。ああ水餃子も食べたい。

 

中学生の頃英会話教室に通っていて、その教室の面白かったのは、行くと毎回担当の先生が違ったこと。全部でおそらく10人くらいの先生が在籍していて、交代で担当してくれるのだけど、先生の出身地はオーストラリア、イギリス、アメリカ、アメリカでもハワイ、とかいろいろ。人種も白人、黒人、アジア系、インド系などなど、訛りも喋り方も様々で、その日どの先生が自分のクラスに来るのかは行ってみないとわからない。私はカリフォルニア出身アジア系の若くて明るいキャシーという先生が結構好きで、クラスが始まる合図のベルが鳴り、教室のドアが開いてキャシーが入って来るとなんとなくラッキーな気分になった。キャシーは今思えば典型的カリフォルニアのアジア系女子という感じで、黒のストレートさらさらロングヘアをかきあげて「最近気になる男の子いないの?」と授業中、東京の地味な女子校に通う地味な制服の私に聞いたりして、キャシーのそういうところが私は嫌いじゃなかった。

 

ある日キャシーは教室に入ってくるなり、

"Do you like gyoza?"

と私に聞いた。餃子は好きなので、たぶん "Yes, I do," とでも答えたのだと思う。するとキャシーは机にパンと両手を置いて、天井の方を大きく見上げるとゆっくり後ろに反り返り、

"I love gyoza."

と言ったのだ。ラブの「ラ」を思いーっきり引き伸ばしてゆっくりと。英語を習いたての13歳の私は、Loveって、餃子もloveすることができるんだ、餃子のこともloveしていいんだ、愛せるんだ、愛していいんだ!となんだかすごく感動して、家に帰って母に早速そのように報告した。

 

13歳の私って何を愛していたんだろう。当時住んでた荻窪の家で飼っていた秋田犬のさぶちゃんはまだうちに来ていなかったし、猫のみーちゃんが来たのははもっともっと後、私たちが台湾に戻ってから。父や母に対する深く自然であたたかな情感を愛しているとか love とかいう言葉で言い表せるのだと教えてくれる人はいなかったし、自ら愛していると表明できるようになるにはまだまだ幼稚な心で「そもそもお父さんとお母さんは愛し合っていないじゃないか」と憤慨していた。そうだとして、そんなこと関係ないのにね。何を愛してたんだろう。通っていた中学校の古い校舎の建物、住んでいた家の外壁の古びたクリーム色、少し苔っぽい屋根の赤みがかった色合い、13歳の誕生日に母がくれた赤いセーター、お小遣いで買った全音のドビュッシーの楽譜、アラベスク、ピアノの先生がくれた、小さな飾りのたくさんついたブレスレット。小学生の時ママがくれた陶器でできた白鳥の形の置き物。小花柄の布でできた淡いピンクの丸い小銭入れ。思い出せるのはそんなものだろうか。餃子も愛していいんだと知って、私は何か変わったかな。

 

さて今夜は国分寺でジャズスタンダード歌います。愛の歌ばっかりだよ。