角砂糖

今日は雲が多いけど、なんとか晴れ。暖冬に慣れてしまったせいか、風の強かった昨日はとても寒く感じた。

 

ライブに来てくださる方からよくお菓子をいただくので(皆さまいつもありがとう)毎朝コーヒーかミルクティと一緒にお菓子を食べる習慣がすっかりできてしまって、今日みたいに時々お菓子が切れた日はあたふたしちゃう。棚の奥をあさったら、何年か前に買ってそのまま忘れてた沖縄産の黒糖が見つかったので、引っ張り出してきてボリボリ。そういえばおばあちゃんは砂糖、特にコーヒーに入れるような角砂糖が大好きな人で、母がせっかくかわいいシュガーポットに詰めた角砂糖を「ちょっとだからいいでしょ」と言って、結局全部ボリボリ食べて、次は台所から母の買った角砂糖の袋を探し出してきてまたそれも全部ボリボリ食べた。そんなおばあちゃんの様子を見て母はいつも、同じタイヤルの村で育った母の幼馴染が生まれてはじめて喫茶店に行った時、テーブルの上に置かれたポットの中の角砂糖に興味を持ち、試しにひとつ齧って、それがあんまり甘くておいしいのでそのままどんどん食べはじめて、お店の人に見つかって「おい何してるんだ、この野蛮人」と怒られても、おいしくて止められず、ついにポットが空っぽになるまで全部食べた、という話を、何度でも、笑いながら眉をひそめてくり返した。何度も何度も聞いてる話なのに、おばあちゃんは毎回ヒャアヒャア笑っては、「ウィー、蕃人だからこれは本当に仕方がないでしょう」と言って、ボリボリと角砂糖を食べ続けた。

 

もうすぐお菓子が切れそうなことには気付いていたので、この間、いつもより少し早く帰れた日、藤沢のデパートに寄った。たまには少しいいお菓子でも自分用に買ってみようかと思って、地下の食料品売り場に行き、一周歩いて、そのままなんとなくエスカレーターを上って出てきてしまった。明治屋でしか売ってるのを見ないヨーグルト(よく買った一番安いやつ)や泉屋のクッキー、天ぷらやお惣菜を選ぶ母くらいの年の女性、いろんなものがとっても懐かしかったのに、懐かしい気持ちだけ味わったらなんだかもうそれでよかった。DEAN&DELUCAで焼き菓子でも買って帰ろうかと思ったけど、もう胸がいっぱいで、そのままデパートを出て、図書館の返却ポストに本を返し、お花がいつも元気なので気に入ってるお花屋さんを覗いて、フリージアと豆の花を買って住宅街を通ってゆっくり家に歩いた。

 

昨日は千歳烏山までレッスンへ。レッスンと言っても、私は特別なメソッドのようなものを教えられる訳ではないし、せめてピアノで伴奏して、一緒にリズムをとって一緒に歌をうたっているという方が正確なんだろうけど、それでも何年もレッスン続けてくださる方がいるのは本当にありがたいことだ。歌と自分との関わりが、人前で一人で歌う以外にいろんな形があるということは、私にとっても大事なことだと思っている。

 

レッスン後、食事と紹興酒をいただきながらいろんな話をして、バスに乗って成城に出て、駅ビルに入っている三省堂に寄ってぷらぷらして、まだなんとなく名残惜しく、駅前のスタバでコーヒーを飲んでから電車に乗った。この独特の懐かしさはなんなのだろう。下町ではない東京の持つあの清潔でスノッブで少し浅はかな感じが、全く好きじゃなかったのに懐かしく、もうちょっとそこに身を置いていたくなる。少しずつ日本も変わっていって、いずれ消えていくものだからだろうか。