まぎらわせつつ

やっと目が覚めてきて夕方。5:30にいきなりピッと鳴ったと思ったら、愛之助が机の上にのぼってリモコンで冷房をつけていた。ミャアミャア言うからごはんをあげて、自分のごはんにはまだ早いので二度寝。起きたいところだったけど、薬のせいか、疲れているのか、全く起きていられない。ただ目のまわりが真っ赤になって腫れているだけでこんなに疲れるなんてなあ。どうせ今日は大雨だから、こうやって1日寝てるのがちょうどいいのかもしれない。母が近くの早餐店で朝ごはんを買って来てくれた。温かくてちょっと甘い豆漿、もち米をぎゅっと握った中にサクサクした細長い揚げパンのような油條、干した大根を漬けた菜脯、乾燥させた豚肉がでんぶ状になった肉鬆とが詰まった飯糰、ハムとチーズを挟んだ三明治。台湾で食べる三明治は他の国で食べるサンドイッチよりなんとなく味付けが甘くて、懐かしくておいしい。ここの店の飯糰ははじめて食べるが、具にコショウがきいていておいしい。母はいつも家でごはんを作るのが好きな人なので、こうやって朝ごはんを外で買ってくるというのは珍しい。おばがこの間「朝ごはんの入っている小さい赤白の袋が愛之助のうんことおしっこを包むのにちょうどいいサイズだ」と言ったからか。日本から戻ったばかりの頃なんて、母は外で何か買って来て食べていると「カハツ(タイヤル語で閩南人)の味と臭いがする」と言って嫌がって、おばに白い目で見られていた。できたての朝ごはんを食べて、中薬の入ったパウチ袋を袋ごと大きなカップに入れて熱湯を注いであたため、開けて飲んだらまた眠くなって、本を読んでいる間に眠ってしまって、起きたらもう3時になっていた。長い長い夢を見た。どこか知らない街で、浴衣を着てビーチサンダルで、靴下を手に持って、楽譜を入れるファイルを探していた。

 

私が寝ている間に母は市場へ行って、私の好物の蓮霧と仙草を買って来てくれた。私がいつまでも目を腫らして寝ているからかわいそうに思って買って来てくれたのかな、ありがとうママごめんね。蓮霧は私の大好きな果物で、日本では見たことがないが、これを小さくしたものをバンコクの路上で売っているのを見つけて、たくさん買ってホテルで食べた。フトモモ科ジャワフトモモというらしい。フトモモ科。やわらかい果肉に噛りついた側からあまい汁が垂れてきそうな名前だけど、日本人の異母兄に食べさせたら、一口かじって「なんだかりんごとナスの中間みたいだね、形はピーマン」と言った。確かにスカスカしていてあんまり甘くないから、甘味度で言えばおいしい水ナスくらいで、でもナスより歯ごたえはあるから、まありんごでも足しておこうか、という感じだろう。りんごほど赤くないけど、ピンクでもなくて、薄まった赤。見た目も一番近いのはピーマンかも。仙草の方はハーブみたいな草で、乾燥させて煮るとなぜか真っ黒い汁になって、それをゼリー状にしたものと液体のお茶状のものとある。そのままだとちょっと苦くて、ちょっと甘くすると、甘くて苦くて、いくらでも吸い込めそう。

 

夜になると蕁麻疹が出るようになってしまって、これはなんだろう。木曜日にマルセロがリリースした Sambalele Momotaro (サンバレレと桃太郎さん!)の動画を何度も見て聴いて、それからずっとポルトガル語の曲が聴きたくなって、今日は Elis & Tom を久しぶりに聴いて、今屋久島に住んでいるサブリナのアルバムを2枚聴いて、一人で Tristeza を歌って、私も何か練習してみようかなと思っていたら眠くなってきちゃった。なんでかわかんないけど、ポルトガル語の曲をかけていると愛之助がやってきて、スピーカーの前か後ろの窓のところに座る。ネコ語っぽいのかな。Rossa Passos かけたらまた来た。趣味が合うわね、子猫。それともただかまってほしいだけかな。ここしばらく毎日細々ながらポルトガル語をアプリで勉強中。好きな曲がいくつもあるので、いつか私もポルトガル語でうたってみたい。と思っていたら、マルセロが声をかけてくれて、ポルトガル語ではないけど、彼の曲にコーラスで、日本、ブラジル、他の世界のいろんな場所の人たちと一緒に遠隔で参加することになった。たとえヘッドホン越しの録音でも、誰かの声やギターを聴きながら、そこに自分の声を重ねて調和できることはよろこびだった。皆さんもぜひ聴いてみてね。

 

そういえば昔も湿疹がひどい時、歌って紛らわそうとしていたっけ、この家で。あの時はジャズのスタンダードだったなあ。